映像翻訳は「しゃべっている」言葉を訳すので、一般の翻訳にはない制限があります。映画の字幕なら1秒間4文字というルールの中で、どこまで訳せるか。海外ドラマの吹き替えなら、どうやって役者の口の動きに合わせるか。さらにドキュメンタリーではノミの生態から宇宙の起源、ピラミッドからシェールガスの話まで、いろんな分野のアカデミックな内容が多いので、どれだけ調べ物ができるかが勝負。翻訳稼業は日々挑戦の苦しくて楽しい毎日です。
英語をスピーディーに読めて、正確に理解できることが翻訳作業の前提条件ですが、思い返せば大学時代にその力が身に付いたのだと感謝しています。実際に仕事をする場合、例えば50分枠の海外ドラマの台本だとA4で50ページ前後あり、それを1週間あまりで訳すのですが、授業で分厚い原書をよく読まされていたおかげで、大量の英文スクリプトを見てもたじろがない度胸と最後まで読み切る体力、さらに英語を正しく読み取る力が、知らず知らずのうちに養われていたんですね。
※『チャーリーとチョコレート工場』『ラーメンガール』『アイス・エイジ3—ティラノのおとしもの』『ヨギ&ブーブー わんぱく大作戦』などの翻訳作品がある瀧ノ島さんには英文学科の「翻訳の世界」(輪講)で講義を担当していただいています。