英文学を学ぶとは、イギリスの文化を学ぶとは、どういうことなのでしょう。「英文学」と「英語で書かれた文学」は同じでしょうか? イギリスといったとき、地図のどの部分を思い浮かべますか? 英文学科を選択するひとの多くは、受験前にこんなことを考えたりはしないでしょう。そもそも英文学科の受験者の大半は、英語を学ぶための場として、この学科を選択するのではないでしょうか。その考え方はあながち間違ってはいません。なぜなら文学の言語とは、正確を期することも曖昧さを醸し出すこともできる自在さを備え、さまざまな比喩やレトリックを駆使する創造性に富み、多様性を受け入れるという点できわめてラディカルな、つまりあらゆる種類の言葉のなかで、もっとも高度な言語だからです。
このような高度な言語は、一千年も前から詩、演劇、そして時代をくだって小説という、形式も言葉の使用法も異なるジャンルを生み出してきました。それぞれのジャンルの作品を読み解くことは、イギリスの歴史を知ることであり、文化に触れることであり、また同時に、文学の言語という高度な「英語」を徹底的に学ぶことでもあるのです。