スキルクラス
必修科目のFoundation Coursesは、ふたつに大別できます。ひとつは英語のスキルクラスです。まず1年次では、Morning English (読む・聞く)、Discussion & Presentation (話す)、Reading & Research (読む・書く) を履修し、英語の4技能をそれぞれ週2回の授業で集中的に学びます。2年次ではそれを継続し、発展させます。とりわけライティングは、ネイティヴ・スピーカーの教員からアカデミック・ライティングの訓練をうける Writing Workshopへとレヴェルアップさせます。ほとんどの大学ではこの段階、つまり1,2年次で英語のスキルクラスは終了となります。しかし上智大学英文学科の新カリキュラムでは語学スキルを重点化し、3年次でも引き続きネイティヴ担当のクラスで4技能の訓練を徹底させます(Advanced Academic English)。そしてその集大成として、4年次ではネイティブ・スピーカーの教員が担当するゼミに所属し、4年間積み上げてきた技能の成果を、英語による高度な内容のディスカッションとプレゼンテーションによって結実させます(CLIL-based Seminar)。
Morning English (英語の多読多聴プログラム)
このクラスでは、様々なジャンルのリーディングとリスニングの課題が与えられ、それに基づく内容、語彙、表現などのテストを0限(1限が始まる前の8時15分~9時)に行います。その目的は、単に読む力と聞く力を伸ばすというよりも、英語力全体を底上げすることにあります。これには2つの言語学的根拠があります。ひとつは、インプット仮説と呼ばれるものです。これは、人間は脳の中に言語獲得装置 (Language Acquisition Device) を持って生まれ、理解できる大量のインプットを受けることで、その言語を使う基盤ができるというものです。もうひとつは、「万人に共通する語彙増強法は多読のみ」という研究結果です。英語の特徴は他言語に比べて語彙数がやたらと多く、そのために中級レベルから上級レベルに上がりにくいと言われています。それに対する特効薬として、このプログラムは言語習得の原理に基づいて組まれています。「英語の朝練」に参加することで、英語力は持続的に向上していきます。
Discussion and Presentation (英語でのディスカッションとプレゼンテーション)
1年生が履修する週2回の授業です。クラスのサイズは20名程度で、ネイティヴ・スピーカーの教員によって行われます。この授業では、イギリスやアメリカ合衆国の文学・文化に関連する題材を用いて、与えられた問題点について話し合ったり、異なる見解を表明しあったりして、口頭による英語運用能力、とりわけ英語で議論をする能力を身につけます。学期末には、作品や作家についてリサーチをして、作品分析をした上で、それをクラスメートの前で発表し、自分の一学期のプロジェクトを完成させることになります。
Reading and Research(英語テクストの読み解き方)
1年生が履修する週2回の授業です。スキルクラスのなかでは数少ない、日本人教員が日本語で行う授業です。この授業のねらいはふたつあります。まずは徹底的に辞書をひき、文章を丹念に読み解く訓練をおこなうこと。いまさらそんなことするの? 大学に入ってまで精読の授業ですか? 文章の意味なんて、なんとなくわかればいいでしょう、大意がつかめればいいんじゃない。そんな風に思っていませんか。たしかにそうかもしれませんが、でもそのレヴェルで通用するのは受験が終わるまでです。大学で専門科目を学び、社会で英語を駆使していくためには、大体ではなく、正確に意味を把握し、正確な日本語に置き換える訓練が絶対に欠かせません。難解な文章を前に、ひとりでは行き詰ってしまうこともあるでしょう。そんなとき、どう読めばいいのかという手がかりを、教師やクラスのみんなの意見を参考にしながら、読み、考え、理解するという行程を一歩一歩着実に進んでいく、これがReading and Researchという授業の眼目です。
このクラスが掲げるもうひとつの目的は、自分の考えを文章化するための基礎訓練をおこなうことです。自分の考えを、口に出して述べることと文字で表すことの間には、大きな違いがあります。新入生対象のアンケート調査では、多くの学生が、レポートの書き方がわからなくて困っていると回答しています。大学で求められるレポートには、高度な思考力が必要であると同時に、アカデミック・ライティングについての知識が必要です。その知識を得ることによって、論理的にものを書くというのはどういうことなのかが実感できるはずです。2年次の必修科目であるWriting Workshopのための素地を固めるためにも、まずはこのクラスで、日本人の教員からライティングの基礎知識をしっかりと学んでもらいます。
Writing Workshop (英語エッセイの書き方)
2年生が履修する週1回の授業です。クラスのサイズは15名程度で、ネイティヴ・スピーカーの教員によって行われます。この授業の目的は、下記の2点です。
- 洗練された英語表現を用いて自分の考えを表現するやり方を身につけること
- Academic Writingと呼ばれる《英語による論文作成法》を身につけること
学生は、毎週課題を提出し、それについてネイティヴ・スピーカーの教員による徹底的な添削を受けながら、学期末にはイギリスやアメリカ合衆国の文学・文化に関連する題材について???期末課題 (term paper) を完成させることになります。
Advanced Academic English (英語スキルの高度な運用法)
3年生が履修する週1回の授業です。クラスのサイズは15名程度で、ネイティヴ・スピーカーの教員によって行われます。この授業の目的は、下記の2点です。
- Discussion and Presentation(1年次)、Writing Workshop(2年次)で身につけた、英語で自分の考えを発信する能力にさらに磨きをかける
- イギリスやアメリカ合衆国の文学・文化に関連する題材について、その歴史的背景の理解に支えられた分析を行い、専門的な議論をスピーキングやライティングのかたちで展開する
なお、EAPとはEnglish for Academic Purposes(学術用英語)の略です。特に3年次の秋学期から交換留学をする学生にとって、この授業の内容は、英語圏の大学でネイティヴ・スピーカーの学生とともに授業に参加するための理想的な準備となります。
CLIL-based Seminar (内容言語統合型学習による英語ゼミ)
4年生が履修する週1回の授業です。クラスのサイズは20名程度で、ネイティヴ・スピーカーの教員によって行われます。この授業では、CLILの教授法に基づいて、学生がイギリスやアメリカの文学や文化について、英語を使って高度なレヴェルで思考し、小論を書き、議論し、発表する力がつくように指導します。なお、CLIL(Content and Language Integrated Learning)とは、ヨーロッパで急速に広まっている、専門教育と語学教育を統合した教授法のことです。そこでは、科目知識、語学スキル、批判的思考力、異文化意識、共同学習などが重視されます。上智大学では、言語教育研究センターを始め、全学でCLILによる教授法を積極的に取り入れています。